2014年6月29日日曜日

僕がICU図書館の選書権をもらったら入れたい本4冊

ICUの図書館(@ICU_lib)はつい先日、「誰も借りてくれない本フェア」がNHKや朝日新聞をはじめ各種メディアに取り上げられ、話題になった。起爆剤となった件のツイートは、現在19,000リツイートを超えている。だが、その「フェア」のすぐ脇で、これまた面白い展示を行っていたことを知っている人は、あまり多くないと思う。

「スカベンジャー・ハント」という、「調べ物競争(?)」が2年前から行われている。参加者は個人またはグループで、ICU図書館にまつわる超マニアックなクイズを20問解く。問題の中には、図書館の隅の隅にしまわれた資料をひっくり返して調べないと分からないようなものも少なくない。最も多く正解した参加者は、図書館に自分の好きな本を入れていい権利(選書権)を5万円分もらえる。2位の人は3万円分、3位の人は2万円分の選書権をもらえる。

3回目となる「スカベンジャー・ハント2014」の入賞者の選んだ36冊の本が、入賞者手作りのポップ付きで、7日間だけ展示されていたのである。

選ばれた本は、ICUのブクログアカウントの「スカベンジャー・ハント2014」のカテゴリから見ることができる。

このイベント、楽しそうだとずっと思っていて、私は、入賞されたみなさんのセレクションをとても楽しく眺めた。本そのものは、私の専門外のものばかりだったので、内容にそれほど興味を持ったわけではない。じゃあ何が面白かったかって、「あるマニアな学術分野に並々ならぬ探究心を持っていて、◯◯を知りたい!という熱意に突き動かされている同世代の選ぶ書物」というのが、それはもう「そそる」のである。何て言ったらいいのか。そういう方も、そういう方に選ばれた本も、すごくカッコよくないか。

ある分野を追求している人が欲しがるような本は、きっと一流に違いない。彼らの世界が、自分の世界の中に容赦なく入り込んでくる。入賞者のインタビューは、学内の人しか見られないようになっているので詳しくは書けないが、例えば「明治期の大外交官某の大ファンだから、あの本を入れたい」とか、「微積ができないと理解不能な、480ドルくらいのあの分子料理の本を入れたい」だとか、大体こんな調子なのである。それを読んで私は、まず、そんな目が回るようなマニア(しかも多くは後輩!)がICUにいることに感激し、次に、みなさんのぶっ飛んだ関心におったまげる。そういうエクスタシー。

私のこの快楽、分かっていただける人いるかな。

彼らの強すぎる知識欲に共感できるのも、私もマニアの端くれだからかもしれない。私はたぶん書道狂いである。関心の対象は中国や日本の書だけにとどまらない。文字を美しく書いたもの一般が好きなので、浄瑠璃の床本の勘亭流や、アラビア書道や、中世ヨーロッパの手書き写本の文字まで範疇に収める。本は、小説とかを買うことは皆無で、書に関する解説書・図録・字典類ばかりを買いまくっている。

さて、「スカベンジャー・ハント」の展示を見たら、仮に私も選書権をもらったとして、ICU図書館に入れたい本を自分なりに選んで紹介してみたくなった。人の欲しがる本を知るワクワクを味わわせてもらったので、今度は私が発信したいと思ったわけだ。本には別に興味を持っていただかなくてもよい。「よく分からないけど、物好きがいるんだナァ」と思っていただければ十分である。本質は、知を愛するかどうかだ。(・`ω´・ ●)キリッ

入れたい本は、書に限定せず探したのだが、結局すべて書や文字に関係してしまっている。言語学専攻だから、言語学の本も入れなければと、探したのだが、ICU、言語学の本はすごく充実しているんだよな。最新の学術書の事情も、あいにく不真面目にしてよく知らない。

選書の基準は、(1)個人で買うには高くて、(2)私個人だけではなく多くのICU生にとって有益であると思われるものを選んだ。値段はamazon.co.jpまたはamazon.comの新品のもの、『日本書流全史』は絶版のため他サイトの中古の最安値を載せている(2014年6月29日現在)。値段の合計は考慮していない(優に5万円を超えている)。

African Alphabets
Saki Mafundikwa(2006)364ドル


アフリカ独自の文字といえばリベリアのヴァイ文字やエチオピアのゲエズ文字くらいしかないと思っていたら、AdinkraとかShü-momとかいう、大変興味深い記号や文字もある(あった)のだそうだ。これは日本で手に入る本ではなかなか知ることができない。文字好きにはもちろん、アフリカの文化や民俗に関心のある生徒は必見だ。

本書は、著者によるTEDのこのトークで知った。しかしこの本、そんなに大型じゃないのに、高すぎる。

アラビア書道の宇宙―本田孝一作品集―
本田孝一(2006)10,584円
アラビア書道の宇宙―本田孝一作品集 [大型本] / 本田 孝一 (著); 白水社 (刊)

本田孝一は日本アラビア書道協会会長。日本のアラビア書道の第一人者である。本田氏は、ICUのご近所、東京外国語大学の卒業であるためか、外大図書館には本書がある。私も外大でこれを借りて眺めたが、カラーの大型本で大変美しい。本田氏の現地での修行の回想録や、アラビア書道の書体や歴史、用具についての解説もあり、読み応えもある。

Chinese Calligraphy
Yujiro Nakata(中田勇次郎)(1983)93ドル


書道部にたまに見学に来る留学生に見せてあげられるような、日本または中国の書に関する英語の解説書があればいいのにとつくづく思っている。だが残念ながら、少なくともICU図書館には、おすすめするものはほとんど無いのである。書き手はふつう書道に詳しくないから、内容が薄っぺらかったり、とんでもないことが書いてあったり、特にうまくもない書(家)をフィーチャーしたりしているがほとんどだ。(挙げ句の果てには、図版を逆さまに載せていた本もある!)英語と書、ともに一流の日本人や中国人が書くのが理想なのだが、そういう人を私は存じ上げない。

中田勇次郎(1905-1998)は、書道史家、京都市立芸術大学名誉教授。『文房清玩』、『日本書道の系譜』、『中国書論大系』など、日中をまたいで書に関する膨大な著作を残しており、我が国の書学者としてまず名を挙げるべき1人である。標記の本は、中田勇次郎が携わった解説書(だと思われる)。

同じ中田勇次郎の英語書籍でも、The Art of Japanese CalligraphyはICUにある。中国の書の歴史は日本の2倍ある。ぜひ書の源流、中国もカバーして、片手落ちを解消してほしい。

日本書流全史
小松茂美(1970)9,000円

小松茂美氏(1925-2010)なしでは、今日の国文学、日本美術研究、日本書道史研究はなかったと言っても過言ではない。元東京国立博物館美術課長。多くの大学で教鞭もとり、『古筆』、『日本絵巻大成』、一般向けの新書『かな ―その成立と変遷―』など、浩瀚な著作を残した。

どういうわけか、ICU図書館には『古筆学大成』全30巻をはじめ小松茂美の著作が大変多く、レポートを書くために何度かお世話になった。しかしこの『日本書流全史』がなかったために、何度かもどかしい思いをした。高いから、買いたくもない。図録はもう充分だから、解説書をおねげーしますだ!

2014年6月11日水曜日

失われた「夜の寝覚」最終部 新発見の断簡を見に

平安後期の王朝文学「夜の寝覚」の欠落した最終部の一部が発見されたと、読売新聞が5月27日付朝刊で報道した。

菅原孝標女の作とも言われる「夜の寝覚」は、最終部など一部が現在に至るまでに失われていた。しかし実践女子大学が京都市で購入した断簡を調べたところ、冒頭部に記されている和歌「知らざりしやまぢの月をひとり見て よになき身とや思ひいづらん」[1]が決め手となって、「夜の寝覚」の最終部だと同定できた。これまで欠落部分のものと推測されてきた一連の断簡とも類似するため、合わせて2000文字程度を復元できる可能性が出てきたという。

ちなみにこの断簡は、南北朝時代の後光厳院によって写されたという極札(筆跡鑑定書)が付いていた。「極めつけ」の語源である。

さて、私はこのニュースを上記紙面上で知ったのだが、告白すると、それまでに「夜の寝覚」という作品名を聞いたことすらなかった。では、なぜこんなことをブログに書くのか。

というのも、くだんの断簡の筆跡が大変美しかったからである。文学研究上の意義も大きいけれども、同時に書としても、非常に優れていると思ったのである。

この断簡(書の世界では古筆切ともいう)は、6月7日から10日までの4日間、渋谷の実践女子大学で展示されていた。書道部の先輩と一緒に昨日、この目で見てきた。

この古筆切は、それ自身は縦16.9cm、横14.8cmの小さな紙ッ切れである。折り紙くらいの大きさである。しかし古筆切は一般に、鑑賞のために掛け軸にされていることが多く、この「夜の寝覚」最終部も例外ではなかった。新聞紙面には断簡の本体しか載っていなかったが、実物は幅4、50cm、高さは人の身長を優に超えるであろう細長い軸に表装されていて、裂(きれ)は紺地に金色(?)の大きな菊紋の入ったものだった。たいへん格調高い表装であった。その書は、細太のはっきりした瑞々しく色っぽい線であった。

その他のメディア報道
5月29日NHKニュース おはよう日本
朝日新聞6月3日付夕刊

鑑定した横井孝教授の論文は武蔵野書院のこちら。武蔵野書院のブログ記事

[1]和歌原文:志らさ里しやま地の月を日と利み帝/よ尓なき身とや思日いつらん(「/」は改行。)

2014年6月2日月曜日

ミッドナイトウォーク2014 ディズニーランドから三鷹まで

今年も、ミッドナイトウォークで、ディズニーランドから三鷹のICUまでの40kmを徹夜で歩き通した。ついに、4年連続で参加してしまった。達成感もひとしおである。

地図は東から、舞浜駅、木場公園、靖国神社、新宿駅(休憩地点など)

ミッドナイトウォークは、ICUまでの40kmを歩くイベントで、ICUのサークルRunnersが主催する。毎年5月下旬か6月上旬に行われていて、スタート地点は毎年異なる。今年は5月30日金曜日の夜に、ディズニーランドの最寄り駅、舞浜をスタートし、翌朝にICUにゴールした。

私は1年生のときから、毎回参加している。ちなみに私の参加した4年間では、出発地は東京スカイツリーと舞浜駅が交互であった。(参考:1年生のとき2年生のとき3年生のとき。)

Runners部員のスタッフは除き、今回の参加者は50名以下であった。卒業生については存じ上げないが、同学年のRunners部員以外の一般参加者で、4年連続参加したのは私だけである。

スタートは、例年並みの夜9時40分頃。中間地点の新宿駅には、確か朝5時頃到着といつも通りであった。新宿駅からICUまでの17kmについては、今年は10人ほどのグループでまとまって歩かなければいけなかったため、例年よりペースは落ちた。ゴールしたのは9時40分頃と、過去最も遅かった。(最早記録は去年の8時50分。)出発から到着まで、休憩も含めてちょうど12時間だった。

半袖では寒いくらいだった深夜の空気も、やがて穏やかになり、日が明けて8時くらいからは、帽子を取り出したほどに朝日が後頭部に照った。

今回は途中の写真を1枚しか撮らなかったので、2年前の写真。
出発して最初の方の大きい橋。

新宿駅からの甲州街道+吉祥寺通り+東八道路のトリプルパンチは本当に辛い。曲がり角のほとんど無い単調な道で、信号も多く、交通量が多くうるさい。いつまで歩いても目的地が見えないのは、絶望に近いものがある。経験のない初参加者には、その恐怖は倍増するだろう。足の疲労は容赦無い。

今年は、歩行中は例年並みに足の裏が痛んだが、ゴール後の痛みが意外にも軽かった。1時間あまり休んだ後には、ほぼ通常通りに歩けた。途中の休憩のしかたがよかったのだろうか、この1年で体力がついたのだろうか。いや、ゆっくり歩いたおかげかもしれない。

徹夜で40km歩いたという事実は、1つに強みになると思う。友達に自慢できることが1つ増えるというのもあるかもしれない。だけどそれだけじゃなくて、自分の体力を見直すいい機会にもなり、歩ききれば、自信にもつながる。ICUの最寄り駅(中央線の武蔵境)から舞浜駅までは、電車で1時間10分である。その距離を12時間かけて歩くのである。つくづくアホらしい行為だが、そこに意味を見出すかどうかが、ミッドナイトウォークを楽しめるかどうかの分け目なんじゃないか。

夜の東京を歩くワクワク感を味わうこともできる。東京の街では夜な夜な、同じ道にまた出てきてしまったと思うほど、至るところで土木工事が行われている。行き交うクルマの大半は、深夜帰りのサラリーマンを待つタクシーである。24時間営業の牛丼屋の中は、がらんどうである。電車も止まった夜の東京の息遣いを見ることができるのも、ミッドナイトウォークの醍醐味の一つだろう。

メモ
カロリーメイト:6本
アクエリアス:約1.3L。
歩数:

30日
21時:2,298
22時:5,423
23時:4,982
31日
0時:3,748
1時:5,561
2時:3,972
3時:3,101
4時:4,026
5時:3,076
6時:5,754
7時:6,344
8時:4,842
9時:4,123

計:57,250歩