『何でも見てやろう』・『江戸川乱歩』

小田実(1961)『何でも見てやろう』河出書房新社
(画像リンクは文庫版)
何でも見てやろう (講談社文庫 お 3-5) [文庫] / 小田 実 (著); 講談社 (刊)

先日読み終わった『深夜特急』で、著者が触れていたので、読んだ。

いったいこの本、過去何十年の、何十人のICU生の手で磨かれてきたのだろう。この本を手にとって、ビックリした。ハードカバーの、ひらく側の2隅はすっかり丸まり、その丸まりに合わせて、中身のページも角が取れて気持ちのよい曲線を描いている。ハードカバーも、ICU生の過酷の使用のもとには、中身を保護する役目を果たしえなかったと見える。背表紙も破れており、テープで補強してある。かつての司書によるものと思われる手描きのタイトルが、この本の歴史を物語っている。

この本はよほど人気だったと見える。それにしてもボロすぎて、誰かがこの本を座右の書よろしくかばんに詰めて、世界一周旅行にでも出かけたのではないかという妄想までしてしまった。

本書は、著者がハーバードへ留学したのち、日本への帰途として、ヨーロッパ、中東、アジアを、1日1ドルの、乞食さながらの生活で生きながらえながら、見て歩いた、その紀行である。面白おかしく読み手をつかんだと思えば、一転、えらく真剣に論を立てて、沈思させられた。それゆえ、単純な紀行ではない。また、何らかの形で海外に出ていく人に、この本を薦めたいと思った。

紀行にはまりつつある。『深夜特急』とこれを立て続けに読み、それと同時に、ユーラシア大陸を横断中の友人のブログを一つ読んでいるので、頭の中が少しこんがらかっている。ただしこの状況は満更でもない。自分の中でひとつの統合が出来上がるからである。ふむふむ、1960年ころのイランはああで、1980年ころはそうで、2013年はこうなんだな、ということが分かる。インドはイランほど変わっていない気がするな、とかも分かる。そして、旅行に出たくなる。

江戸川乱歩(2008)『江戸川乱歩』筑摩書房
江戸川乱歩  (ちくま日本文学 7) [文庫] / 江戸川 乱歩 (著); 筑摩書房 (刊)

ちくま日本文学の短篇集。興味はなかったが、日本文学の先生が薦めていたので読んでみた。文学とは本当にごぶさただな、と思ってこのブログを調べたら、なんと最後に読んだフィクションはジョルジュ・ペレックの『煙滅』で、去年の7月だった。1年2ヶ月ぶりだった!

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