2013年3月7日木曜日

風間喜代三『言語学の誕生―比較言語学小史―』

1か月以上ぶりに本のことを書く。いろいろと忙しかった2月が終わり、春休みに入って時間ができた。この間にも本は2冊くらい読んではいるが、ブログに書くほどでもなかった。授業や期末レポートのために目を通した本なら、もっとある。だがこの本は、特筆に値するだろう。頑張って2日で読んだ。

風間喜代三(1978)『言語学の誕生―比較言語学小史―』岩波書店
(名前はきよぞうと読む)

(現代言語学につながる)言語学は、比較言語学に始まった。比較言語学とは、共通の祖語をもつ言語、つまり同語族に属する言語を通時的に比較することにより、その祖語を再建する学問分野である。

いま、比較言語学に始まったと言ったが、正確には、言語学はインド・ヨーロッパ語族に属する言語の比較研究に端を発する。18世紀後半、多言語に通じたイギリス人のウィリアム・ジョーンズは、インドの古典語サンスクリット語とギリシア語、ラテン語が、語彙や文法に関して、偶然にしては多すぎるほどの一致を見せることに気づき、1786年にカルカッタでの講演で、それらの言語が今はなき共通の祖語から分かれ出たのではないかと述べた。この彼の一言がきっかけとなって、主にドイツで、自分たちの遠い祖先がかつて話していた言語、すなわちインド・ヨーロッパ祖語(Proto-Indo-European)の探求というロマンに向けた、新しい学問が生まれる。

ただ、ロマンに満ち満ちているのはいいが、この印欧祖語の再構築という難題に取り組むには、18世紀の言語学はあまりに未熟だった。ロマンティシズムを乗り越えて、立派に言語学と呼べる分野が成立するには、ジョーンズの講演から1世紀は待たなければならなかった。

本書は、主にジョーンズの発表から1900年前後のソシュールに至るまでの印欧語研究を追ったものである。印欧祖語の再建の方法論の上に、反省に反省が重ねられ、今日の広大な言語学があると言っても過言ではない。それを振り返るのが、本書であろうか。

個人的な感情を言わせてもらえば、印欧祖語の再構築はロマンだ。それは私の中で紛れも無い事実だ。系統的に全く関係のない日本語を話す私にとっても、北はアイスランドから南はインドに至る大語族の諸言語の源の源がどういう形をし、どういう音をし、そして、どこで話されていたのか、わくわくせずにはいられない。これほど知的好奇心をくすぐるものがあろうか。

本書は端々の文献に言及される。名著なのだろう。後半はかなり難しかった。

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