言語学の冬:ヤコブソン、フォント、ハレ『音声研究序説』

年末年始は、言語学で。最後。

R・ヤコブソン、G・フォント、M・ハレ(竹林滋、藤村靖訳)(1965)『音声研究序説:弁別的特徴とその関連量』研究社
R. Jakobson, C. G. M. Fant, M. Halle. (1951). Preliminaries to speech analysis, the distinctive features and their correlates. The MIT Press.

2月となりもはや年始とは言えないのだが、本書の言語学上の意義と、読み始めた時期(1月上旬)を加味して、このシリーズのトリとしたい。

注などを含め120ページ足らずの薄い本だが、著者は言語学のビッグネームが並ぶ。ロシア出身のローマン・ヤコブソン(1896-1982)は現代音声研究の祖であり、その構造主義的、分析的手法はレヴィ‐ストロースら各方面に影響を与えている。戦後はハーバード大学やMITで研究を続けた。フォント(1919-2009)は恥ずかしながら初めて聞く名だが、スウェーデンの工学者で、音声合成の創始者だという。ハレ(1923-)はラトビア出身で、ヤコブソンのもとで学び、音韻論の研究で有名だ。

本書はMITの当時の音声学研究所での著者たちの共同研究を、単行本の形でまとめたものである。

学問は先行研究に積み上げがあってこそのものである。著者たちの研究から60年以上の間に、議論が繰り返され、当時は画期的だった本書も、今はすっかり古典となっている。現代の言語学に慣れている身には、用語や概念等が微妙に違い、難しかった。もちろん、私の知識不足もある。

ICUにあった本書はぼろぼろで、補強のために表紙に貼られたセロテープも黄色く変色し粘着力をすっかり失っていた。首の皮一枚でつながっていた表紙が取れてしまわないように、慎重に扱わなければならなかった。

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