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キレやすいのはやっぱり若者だけじゃない:藤原智美「暴走老人!」

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老人が(も?)キレやすくなっている。 今日読了した本書が訴えかけるこの事実は、最近私の実感としても大きくなっています。何かといちゃもんを付けたり、暴力的になったりするシニアの方が多い。そう考えていたとき、数年前に少し話題になった本書を思い出し、読んでみたくなったのです。私がいつも読むジャンルとは全く違う、社会学的な本です。 暴走老人! [単行本] / 藤原 智美 (著); 文藝春秋 (刊) 私も「暴走老人」に出会ったことがあります。1つ目は、中学生くらいのとき、家族で東京の上野に遊びに行き、レストランで昼食を食べていたときのこと。60手前といったおじさんがせわしそうに店内に入ってきて、ウェイターに相席はできないかと尋ねていました。そのときレストランは昼の大賑わいで、何人かが行列を作っていて、私たちも何十分か待ってやっと昼食にありついた体でした。ですがその男性は、その行列を無視し、とても忙しいから相席にしてくれと頼んでいました。しかしウェイターが相席はしておりませんと言うと、彼の怒りが爆発しました。「バカ野郎!」彼が大声で怒鳴ると、そそくさと店内を後にしました。 もうひとつ印象的なのは、つい最近、去年の10月末のICU祭での書道展でのことです。70歳前後の、身なりは決してさっぱりしているとは言えない男性が、私に話しかけてきました。展示された草書作品を指さし、「あれが読める人がいるか?」。どうやら彼の主張は、崩した文字が読めないし、字自体は分かっても内容がさっぱり分からないから、解説を付けろということでした。それだけのことを、彼は何度も何度も繰り返し、私は5分(以上?)付き合わなければなりませんでした。そのとき展示教室にいたのは私とその男性と数人の先輩だけでしたが、場の空気は最悪。反論しても長引くだけなので、私は素直に「そうですね」などと相槌を打つのみでした。 さて、面白くない話はこれくらいに。本書はこれらの老人をどう分析するのか、興味がありました。Amazonのレビューで書かれている通り、確かにタイトルは挑発的ですが、中身は冷静。老人を弱者としてかばうスタンスで、根本の原因を社会全体に求めます。 本書に対する細かな要望はいくつかありますが、これを読んで(ここでは省略しますが)いろいろ思うところや疑問に思うことが生じました。(英語ではThought-Provoking

国際基督教大学(ICU)に入学したらインターネットでできる9つのこと

2月も終わりに近づき、受験シーズンは佳境を迎えます。ICUでは10日に合格発表だったそうで、入学の準備を始めた人も多いのではないでしょうか。数日前、ICUのすぐ近くで、車に乗って不動産屋さんと一緒に部屋探しをしている(らしき)親子(らしき人たち)を見かけました。私もそのころを思い出し、とても懐かしく思いました。 しかしICUには、何が待ち構えているのか。英語、友達、授業など、心配事は多いことでしょう。そこで、一介のブログ管理人に過ぎないICU生の私CRですが、ICUの入学前後にネット上でできる(もしくはすべき)ことを、少ないながらも挙げてみました。何かあったら随時追加します。(注)ICU生以外には全く無益なものもあるので悪しからず。 ****** 1.   ICUの学内サイト「 W3 」や「 ICU Portal 」をホームページタブに追加、またはブックマーク W3をあまりチェックしていないICU生は結構いると思われますが、毎日のように更新されていますし、重要なお知らせもありますので、頻繁にチェックしましょう。特に4月入学直後は、サークルの新入生歓迎コンパなどの情報であふれ返るので、要チェック。(追記:2012年4月より、W3の一部機能がICU Potalが移行されます。)ホームページタブの追加の仕方は、IE(9)では右上のツールボタンから「インターネット オプション」→「全般」で。Firefoxは左上の「Firefox」ボタンから「オプション」→「一般」→「ホームページ」で、URLを「|」で区切って入力すればOK。Chromeではこの機能は使えないかも(?)。 (注)学外の方はW3にアクセスできません 。 2.   学内ウェブメールを他のウェブメールサービスに転送するよう設定 ICUの学内ウェブメールは、すこぶる使いづらい。デザインも悪く、最低限の事しかできません。ですが自分の好きなアドレスに転送するよう設定ができます。Gmail やYahoo!メール、Hotmailなどの手持ちのウェブメールアドレスに転送すれば、利便性が数倍上がること請け合いです。設定の仕方はW3→「ehandbook」→「コンピュータ・メールに関すること」→「yamata宛のメールを転送する」。 3.   ELAの先生たちはどんな人たち? ICU新入生を待ち受けるのは、なん

多分野のコラムが充実!「世界の文字を楽しむ小事典」

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ちまちま3週間くらいかけて読みました。タイトル通り文字の本です。文字関連の本で言うと、随分前に読んだS. R. フィッシャー著「文字の歴史」と川田順三著「 無文字社会の歴史 」を思い出します。どちらも読み切りはしませんでしたが。 世界の文字を楽しむ小事典 [単行本] / 町田 和彦 (編集); 大修館書店 (刊) 私が高校で文字一般に興味を持ってから、なぜ文字を扱う学問がないのかと疑問に思っていましたが、ICUで言語学を学んで理由がわかりました。理由を2つに分けると、(1)話される言葉は、赤ちゃんの時に全ての人間が無意識に覚える、生物学的にプログラムされた能力であるのに対し、書き言葉は一生懸命勉強しなければ覚えられない後天的なものであるため、人間の言語能力そのものを研究する言語学の対象とはなり得ないから。話し言葉は(特に障害がない限り)地球上のすべての人が習得しますが、西アフリカのモシ族など、文字を持たない民族がたくさんあるのがその例です。 そして(2)書き言葉と話し言葉は発音が一致しないから。ジョージ・バーナード・ショーの有名な例ですが、cough(咳)のghは「フ」、women(女性、複数形)のoは「イ」、nation(国)のtiは「シュ」なのだから、ghotiはfish(魚)と全く同じ発音でいいはずです。こんな一貫性の無い文字を研究していたら、正確な結果など期待できません。 言語の研究に文字は全く当てにならないのです。 話がずれました。今の前提は承知しつつも、しかし、私は文字への興味を失ってはいません。 世界の文字を紹介した本は、探せばたくさんあります。しかし本書が違うのは、単なる辞書で終わっていないという点です。本書で辞書的な部分は、2割くらい。あとの8割は、それぞれ異なる著者によるコラム集です。5ページ前後の様々な分野のコラムで、テーマはラテン文字の成立から、インターネットでのモンゴル文字の表示の問題についてまで、多岐にわたります。この本書のコラムとその多様性が、私の一押しポイントです。

トニー・ラズロと友達になりたい:彼の「言語愛」エッセイを読む

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2月は更新が滞っていました。ICUはまだ授業があって、ここ2週間ドドドドドと忙しい日々が続きましたので。2週間休まず走り続け、金曜日の今日はプレゼンやテストなど大きなタスクが一気に4つ終わり、やっとゆっくり記事を書けるまでになりました。 さて早速ですが、「 ダーリンは外国人 」を始めとして、トニー・ラズロ、小栗左多里夫妻の本は、数えてみたらたくさん読んでました。いままでに読んだのは「ダーリンは外国人」と同2、「 ダーリンの頭ン中 英語と語学 」と同2、「 めづめづ和文化研究所 京都 」、そして「 ダーリンは外国人 with BABY 」です。 特に「頭ン中」でトニーの語学オタクな様子を見るにつけ、彼の興味が私のと色々かぶっており、トニーとは話が合うに違いないと思っています。トニーとゆっくりディープな言語トークをしてみたいものです。さらには、彼のオタクが妻のさおりに理解されなくてかわいそうだな、とか余計なお世話まで焼いています。私の知るあらゆる人の中で、トニーが私と一番近い考え方してるんじゃないかなと思うくらいです。少なくとも言語に関して。 先日、ICUの書店でトニーのエッセイ、 英語にあきたら多言語を! ~ポリグロットの真実~ [単行本] / トニー ラズロ (著); 小栗 左多里 (イラスト); アルク (刊) が並べられていて、あまりに面白そうで思わず買ってしまいました。 ポログロットとは。ギリシャ語由来で「多言語を話せる人」のこと。トニーはポリグロットで、彼の知る言語は、かじった言語も含めると両手では数えられないくらいでしょう。本書は、トニーのマルチリンガルな生活がわかるエッセイ集で、とても興味深く楽しかったです。 まず本書の一等最初の、言語そのものを愛しているのは「言語愛」と言えるけど、言語を出世とかのための道具として使う(そして好く)のは「言語愛」とは言えなくて、ごっちゃにしちゃいけない、というところを読んで、 そう!その通り!よくぞ私の気持ちを言葉にしてくれた! と、心の中で、頭がもげるほど頷きました。そう、私は、言語が好きだから好きなのだ。

コンピュータの構想者チューリングの日本語版伝記

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私は初期のコンピュータにも少し興味があります。コンピュータの基礎を築いた人物として、アラン・チューリング(1912-54)とジョン・フォン・ノイマン(1903-57)だけは聞いたことがあったので、まずはチューリングの伝記を読みました。 甦るチューリング―コンピュータ科学に残された夢 [単行本] / 星野 力 (著); NTT出版(刊) チューリングの伝記で最も有名なのはAndrew Hodgesの” Alan Turing: The Enigma ”ですが、今回読んだのは(私の知る限り日本語で最も詳しいチューリングの資料ですが)その邦訳ではありませんでした。 その時点でがっかりです。このがっかりが、本書で感じた全がっかりの7割を占めたと言っていいでしょう。なぜなら、私は根っからの原典主義で、私の興味のある分野の本では、最も有名で基本的でオーソドックスなものをまず読むということを一番心がけているからです。 しかもこのホッジスによる伝記、600ページ近い大作で、伝記そのものとしても最高ランクの評価を得ているらしいと来た。対して私の読んだののページ数はその半分以下。なぜオリジナルが翻訳されていないのだ(泣)。 我慢しながら読んだものの、主眼はチューリングの開発した数学の理論や暗号解読法、それらに関する難しい哲学であり、チューリングの生い立ちや人となりの記述は簡潔にして最低限でした。彼の苦悩とかエピソードとか、心の内面をもっと知りたかったです。 それに、本書の論旨である、「今チューリングを語らずしてコンピュータを語れない」ということを強調したいのなら、もっと明確に主張と根拠を示し、難しいことをもっと分かりやすく書いてもらいたかったです。 さもなければ、本書を読んだという気にはなっても、技術的なことも含め全て理解できたという人はほとんどいないのではないでしょうか。事実、コンピュータ科学や科学哲学にめっぽう暗い私は、とりあえず1回、目を通してみて、本書の2/3は理解できませんでした!