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5月, 2011の投稿を表示しています

内容じゃなく文体にも気を払ってみてね

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私は書評などで見つけた読んでみたい本をリストしているのですが、小説はほとんど無くて、大半が自然科学分野の書物です。なので、あまりポピュラーになりにくいなどの理由から、手に入れにくいものもやはりあります。つまり、絶版になっている、値段が高い、書店を探してもどこにあるのかいまいち分からない(店員さんに聞けばいいのだが)、大きな図書館にも無い、などです。 もちろんAmazon.co.jpなど通信販売で買えるものは多いのですが、手に取って読んでもいないものを買いたくありません。私は本は図書館で借りるので十分だと思っていて、買うのは、それがよっぽど面白かったときだけという方針です。 さて、地元の書店や図書館で見つからなかった本を、ここ東京でどう探すか。 私は最寄りで最大の書店、紀伊国屋書店の吉祥寺東急店で探すつもりでした。別に全部読まなくても、パラパラ眺めてみれば買うべきか買わざるべきかは分かるので。しかし、紀伊国屋書店もやはりすべてを満足させるわけではありません。在庫切れの本がやはりありますし、そもそも電車に乗らなければならなかったり、もしくは自転車を何十分もこがなければならないのは面倒です。 そんなことを考えていた4月末、近所に素晴らしい図書館があることに気づきました。 ICUの図書館があるじゃないか 。 ICU図書館の蔵書は学術書が中心なので、灯台下暗しだなあと思いつつ検索してみると、出るわ出るわ、今まで全く見つからなかったあれもこれも。これでようやく何十か月、何年とお目にかからなかった本にご対面できるというわけです。さすが大学図書館、これだけいい環境にいれば、読書も進むってもんです。 前置きが長くなり過ぎました。 5月初め、その私のリストの中からまず借りてきたのは、手軽に読めそうだったこれ、 文体練習 [単行本] / レーモン クノー (著); Raymond Queneau (原著); 朝比奈 弘治 (翻訳); 朝日出版社 (刊) 。原文はフランス語で、原題は"exercices de style"。 ここ1、2年の書評で見つけたから新しい本だと思っていたので、本が意外に汚れていて一瞬それが本書なのか分かりませんでした。本書の出版は1996年でした。フランス語の初版は1947年と、実はめちゃめちゃ古い本でした。 本書は奇書だと思います。ある他愛の

利き手のこと、知ってみたいでしょ?

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今までのように、また本のことを書こうと思います。 大学入学でバタバタと忙しい時期にも、少しだけ本を読んでいました。埼玉に居候している間、ひまつぶしにと読書していました。居候していた時期というのは、 5月2日の記事 を読んでいただければ分かるように4月上旬ですから、1か月以上も前のことになります。何もかもが遅れていて申し訳ないです。 さて、その本は、 左対右きき手大研究 (DOJIN選書 18) [単行本] / 八田 武志 (著); 化学同人 (刊) 。 実はこれは図書館で借りたので、全部読み終わらないまま、返してしまいました。2/3くらいしか読んでなかったと思います。 利き手に関する本です。ちなみに利き手研究も含め、左右脳の働きの違いに焦点を当てた研究分野をラテラリティー(laterality)と言うそうです。 私が読んだところまでの内容で申し訳ないのですが、本書は、利き手に関する良いも悪いも含めたいろいろな通説が、妥当なのかを統計的に検証したり、ちょっと立場を変えて、右利き、左利きはそれぞれどんな分野に長けているのかを検証したりします。 統計データを示して、そこから筆者が「左利き(あるいは右利き)は~~なようだ。」と推測を行ってのがたくさん続くわけで、単刀直入に言えば、内容に単調さを感じないではありません。私がこの分野にそれほど強い関心が無かったこともありますが、この単調さが、私をして読書に熱中せしめなかった1つの理由だと思います。 またもう一つ痛感したのは、利き手研究の弱点は、大部分が統計に依存していて、しかもそのデータの収集が非常に難しいということです。数学を始め、生物学、天文学、考古学など多くの自然科学分野は、ある確実な証拠を得ることができて、そこからある確実な結論を導くことができるという側面を、多かれ少なかれ持っています。しかし利き手研究の場合、定理や法則を見つけることがいまだ不可能なばかりか、予測さえ難しいのです。統計にすべてをゆだねる他に有効な手立てがないのですから、利き手研究にとって大きなボトルネックです。その上、左利きのデータは少なくて集めにくいですから、千人規模とか、統計的に有効なデータはかなり少ないと思われます。 つまり利き手研究は不確かなデータが多くて、不確かであいまいな結論が導かれざるを得ないのです。 ちなみに、意外に思ったことですが、利き