共感覚者ダニエル・タメットの半生「ぼくには数字が風景に見える」

共感覚や、サヴァン症候群に惹かれます。

共感覚とは、1つの感覚の刺激に対して、他の感覚が連動する知覚現象のことです。最も典型的なのは文字や数字を見てそれに色を感じるタイプですが、他にも、味に形を感じるという共感覚者などもいます。(この味はとがっている、というふうに。)共感覚はごく限られた人が持つ、原因不明の能力です。

サヴァン症候群とは、自閉症など脳に発達障害のある人が持つ、計算、記憶、芸術における超人的な能力のことです。例えば、過去から未来にわたって何千年、何万年の日付の曜日を一瞬で当ててしまう人、1度見た風景を瞬時に記憶し、それを何も見ずに正確に描く人、途方もなく大きい数が素数か否かが、考えなくともわかる人、天才的な暗算能力を持つ人などがいます。

私は、そんな共感覚とサヴァン症候群の不思議にとりつかれていました。

昨日まで読んでいた本は、共感覚、サヴァン症候群、アスペルガー症候群を併せ持った青年ダニエル・タメットが自身の半生を綴った、ぼくには数字が風景に見える [単行本] / ダニエル・タメット (著); 古屋 美登里 (翻訳); 講談社 (刊)です。



アカデミックで小難しい話は全く無い、純粋にタメットの驚くべき経験の数々が淡々と綴られており、私にとっては面白いことこの上なく、1ページ1ページが彼の不思議な世界に満ち満ちていました。とても難しいと言われる言語をわずか1週間でマスターしたり、円周率の暗唱でヨーロッパ記録を樹立したりと、冗談ではなく、本書には「普通の」人には経験できない世界が広がっています。あとは、本書をお読みください。もちろん、アスペルガー症候群であったために、彼の子供時代は孤独と苦痛との闘いだったことも付け加えておかなければなりますまい。(タメットの公式ウェブサイトはこちら

そう言えば、2005年に、イギリスで制作された彼のドキュメンタリーがNHKで放送されて、面白そうだったのに私は見逃してしまって、最後の1分くらいしか見られなかったのですが、それがタメットだったとは本書を読んでわかりました。

ちなみに、サヴァン症候群を持つ人は大抵コミュニケーションの障害を持っていて、自分のことをうまく表現することができません。タメットが本書を執筆し、多くの人にアスペルガー症候群やサヴァン症候群のことを知ってもらえたのは、彼の障害が軽度だったために他なりません。

タメットが本書を書いてくれたこと、私が本書に出会えたことを、幸運に思います。

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