哲学的なタイトルだがれっきとしたディスレクシアの本だ

やばい、夏休みが終わる。('Д⊂

はい、まだ懲りずに本を読んでいました。読み終えたのは1週間以上前ですが、いろいろと行事が重なったせいで、更新が今日までずれ込んでしましました。

初めて見たときペレストロイカのことかと思った、プルーストとイカ―読書は脳をどのように変えるのか? [ハードカバー] / メアリアン・ウルフ (著); 小松 淳子 (翻訳); インターシフト (刊)です。



この本の副題がとても興味をひくものだったので、読むのをとても楽しみにしていたのですが、ICU図書館で見つけてがっかり。厚いし、文字ばっかりだし、想像していた内容と全く違うし。ほとんど読む気が失せましたが、よくわからぬプライドが働き、読むことにしました。真剣には読まなかったのに、読了まで2週間以上かかりました。

本書のテーマは、ずばり読字です。内容は大きく3章に分けられており、脳はいかにして読むことを獲得したのか、子供の脳はいかにして読み方を学ぶのか、ディスレクシア(読字障害)の原因は何か、という問題を検討する壮大な書です。

主題が「プルーストとイカ」なのは、この2つが読字の2つの側面、即ち個人的・知的側面と、生物学的側面の象徴としてそれぞれ取り上げられているためですが、これら、特にイカは本書でそれほど重要な役割を果たしていません。タイトルに難あり、といった感を受けました。

それにしても本書の第1印象は「難しそう」でした。たかが読むことだと侮るなかれ。本書はシュメール人から中耳炎まで扱っています。読んでみて、著者の研究の幅広さに感嘆すると同時に、読字の研究が学際的でありとても複雑な分野であることを痛感しました。読字研究はもはや、言語学、神経科学、心理学、脳科学など様々な分野の知識が無いと、太刀打ちできる問題ではなくなっています。

また、字を覚えるのに時間がかかる、文章を流暢に読めないなどの、ディスレクシア(著者は「読字障害」という言葉より「ディスレクシア」の方が気に入っているようなので、後者で書き進めます。)は、本書の中心の話題と言えるでしょう。ディスレクシアは原因や実態などが非常に複雑で、1つに「これだ」というものなど無いと、著者は言います。ディスレクシア患者に対する世界的な偏見は、ディスレクシアの理解を進めることで無くすことができると、著者は、研究者として、そしてディスレクシアの子を持つ母親として、訴えています。

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