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回りくどさ、豊富な語彙、変わったルビ

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書と文字は面白い (新潮文庫) 作者: 石川 九楊 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1996/07 メディア: 文庫 書家、石川九楊の本。 タイトルが自分の方向性にドンピシャだったのでもう、すぐに借りました。借りたのはいいのですが…、 私がタイトルを拡大解釈してしまったのか、内容との齟齬を感じないではいられませんでした。というのも、タイトルに「文字」を入れる必要がないのでは? と思ったのです。 本書は石川氏が新聞や雑誌に載せたコラムを130集めており、見開きにコラム1つと図版1つという構成です。内容は書体、書史など書全般にわたるのですが、扱う文字はもっぱら漢字。タイトルに文字とあるから、他の文字について言語学的な考察も少しはあるのかなと思ったのですが、ありませんでした。まあ石川九楊が書家であることを後になって考えれば、至極当然のことですよね…。 一つ文字といっても、言語学的な意味とか、書道的な意味とか、デザイン的な意味がありますよね。私はそこを理解しておくべきでした。 ともかく、言語学的興味は果てましたが、書道的な興味で読みました。著者の書に関する考えが多方面から伝わってきました。 しかし新聞や雑誌で決められた字数の中で書かなければならないことを、もちろん承知の上で言うと、見開き1ページは短すぎかも。もっと知りたい、もっと勉強したいと思うところがいくつもありました。本のそもそもの構成由来を無視して自分の理想を言うと、テーマを10本か20本くらいにしてじっくりテーマと向き合いたかったです。例えば空海の飛白体の項、もっと読みたかった! 最後に。エッセイとしての性格もしばしば現れるこのコラム集は、清水義範の言うところの「徒然草化」を何回か起こしていました。詳しくは 『日本文学全集』(清水義範) を読んで下さい。

アリストファネスは色々と書いてる

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女の平和 作者: アリストパーネス 出版社/メーカー: 論創社 発売日: 2009/05 メディア: 単行本 ギリシア最大の喜劇作家アリストファネスの代表作「女の平和」です 上のイメージは単行本ですが、私は筑摩書房の「世界古典文学全集」で読みました。 ペロポネソス戦争を風刺する愉快なこの劇は、とっつきやすいと思って読んだのですが、この時代の歴史や文学に慣れていないから、ちょっと難しかったな。なんて書いたらいいのか、いい言葉が思いつかなくて申し訳ないです。 でも、当時のギリシア人は随分解放的だったのですね。 古代ギリシアとかローマの一連の文学や演劇を読んでみることも、一つの勉強かなと思いました。

日本文学全集を読みきった男

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異常なまでの猛暑に大いに苛まれており、目下の悩み種であります。この酷暑と湿度は集中力を削ぎます。 日本文学全集 作者: 清水 義範 出版社/メーカー: 実業之日本社 発売日: 1992/10 メディア: 単行本 さて、学校の(図書館ではなく)本棚に何気なく置いてあった『日本文学全集』なる本。興味をひかれて見てみれば、作者はなんと清水義範。なんだ短編小説かと予想を裏切られましたが、奇しくも清水義範に再び出合うとは。 清水義範は一回読んだことがありました。( その時は傑作選でした 。)だから短編小説だとすぐ分かったのです。 日本の古典(のパロディー)が彼のユーモアに富んだ文で読めるとなれば、勉強に忙しくても読まずにはいられません。けれども、清水義範は、自分でも言っていましたが、濫作で、正直言うとあたりはずれがあったりします。だから彼のファンであるわけではないのですが、それでも読みやすくて、不思議なくらいあっという間に読めてしまうのが魅力です。 本書は、『古事記』から『吾輩は猫である』に至る、日本の名立たる18の文学作品のパロディーだったり、関連したエッセイだったりをつづっています。本書には学校でも扱わない古典が多くあったので、その点が少し勉強になりました。短編を読んで、原典を読んでみたいという作品もありました。 内容が多岐にわたり得られるものが様々です。それが短編の魅力だと思います。